■詳細な経緯(これまでのOP)
オープニング2(9月5日)
●機械神のお告げを聞きに
「覚醒からくり、か」
開拓者を束ねるギルド長、大伴定家(おおとも・さだいえ iz0038)は白いひげをひねった。
「これまで相棒として補佐に徹して来たからくりに、異変が起きておるとな」
年若い女職員、翠嵐(すいらん iz0044)がうなずき、熱心に報告書をくる。
「開拓者の方々が技能を使うには、志体(したい)、あるいは仙人骨と呼ばれる特殊な才能がなくてはなりません。ですが、この報告書によれば、からくりが志体を持つかのような動きをしたとあるのです」
大伴老は表書きにだけ目を通し、芋羊羹を口に入れた。
「報告者の思いこみかも知れんぞ。からくりは古代の遺物じゃ。変わった動きをすることもあるじゃろう。もっと目撃例が増えてからでないと、結論は」
ちらり、と横目で見ればキッと翠嵐が睨みつける。
「大伴様!」
「お、おう。突然大きな声を出すな」
やれやれ、と嘆息した大伴老に、翠嵐がつかつかと詰め寄った。
「確かに彼らは人工物ですが、意思も感情もあります! 開拓者にとっても、大事な相棒さんなんです。一刻も早く原因究明に乗り出すべきです」
今しも自ら駆け出していきそうな翠嵐。大伴老は往生際悪く遠くを見る。
「いやじゃから、それはもう少し目撃例が……」
「大伴様っ!」
聞く耳持たず、だ。だが、彼女はそれで良い。厄介事を案じて気を回すのは、年寄の役目だ。
「わかったわかった」
茶をすすった大伴老はあごに手をあてる。
「以前、からくりが一斉に機能停止した異変があったのを覚えているか。あれもクリノカラカミ様の御技であった」
はっとした翠嵐が瞬きを二つ。先年までは秘事に属する内容だったが、騒動にギルドと開拓者が深くかかわった手前、今では調べようと思えば簡単に出てくる名前だ。
からくりの異変とあれば、恐らくはかの精霊が関わっている、と大伴老は言う。
「クリノカラカミ様の神殿、あるいは御座所というのじゃろうかのう。先にお伺いを立てた場所は、朝廷の管理する遭都(ほうと)の遺跡奥じゃ」
遺跡自体は今も厳重に封を施されてはいるだろうが、大伴老が状況を説明すれば、立ち入りの許しを得るのは難しい事ではない。
「クリノカラカミ様は今回の件も恐らくはご存じのはずじゃ。お伺いを立てにいくとよい」
翠嵐の顔が喜びに輝く。芙蓉の髪飾りが揺れた。そのまま飛び出していきかねない様子に、慌てて声をかける。
「……最近の大乱で来訪者の出迎えまでは手が回らぬじゃろう。野良アヤカシ程度はおるやもしれぬゆえ、護衛は頼んでおくのじゃぞ」
「ありがとうございますギルド長。さっそく開拓者の方々にお願いして参ります」
しかし、大伴老は翠嵐を宥めるようにゆるゆると首を振る。
「神には神の動く理由があるのじゃろうが、わしらに分かるような理由とは限らん。お告げがあると良いのじゃがのう」
(担当:鳥間あかよし)
オープニング1(8月16日)
●ギルド職員の憂鬱
その報告は、当初はただの美談だと思われていた。危機に陥った主を助けようと、からくりが懸命に努力したという美談だ。それから数日が過ぎ、からくりが奇妙な行動を取るようになっているのではないか、と分析したのは開拓者ギルド職員の一人、だという。
「どのケースも、これまでのからくりではありえない……と思うんです」
翠嵐(iz0044)は首をかしげた。港で数多くの相棒を見てきた彼女だが、先ごろのケースには困惑しているらしい。たとえば、盗賊に襲われた主を守るために武器を振るったからくりは、報告によればサムライの技を使っていたのではないかと類推される。主はただの商人だが、護衛には侍がいたのでそれを見て型を覚えた、というような想像はつく。
しかし、問題は一方が志体で一方が人間ですらないからくりであることだ。からくりに志体のような動きができるとは思えないと翠嵐は言う。耳を傾けていた大伴家持は重々しく頷いた。
「お主がそういうのならば、何か胡乱な事が起きているのだろうのう」
「はい。それ以外にも、奇妙なからくりの情報が集まってきています」
これまでも、主よりも奔放に振る舞うからくりがいなかった訳ではない。人間の感情が理解できるように動くからくりも、いた。だが、それは全て何者かの相棒という枠の中に納まっていた。
「……あるいは、からくりというよりも人のような……」
それが吉と出るのか、あるいは凶と出るのかは分からない。しかし、確かな事としては。
「これから開拓者の皆さんに頼る事は、増えそうです」
彼女は途方に暮れたような表情のまま、そう呟いた。
(担当:クラウドゲームス)
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