「ここ暫くの依頼から判明した、神話の時代の歴史です。 依頼はそれぞれ多岐に渡りますから、統合して報告書としました。 何かの参考になればよいのですが……」
図書館司書 アッ・ラティーフ(iz0210)
●神話の時代 護大派の語るところと、島の探索結果はお互いの存在を裏付けることとなります。 それは、遥かな昔、天儀建国の時代よりも更に旧き時代にあった、護大を巡る戦乱の物語でした。 かつて護大が現れた時、人々は二つの道に別れました。 ひとつは、護大による滅びを否定して古代文明の存続を唱えた「世界派」――そしてもうひとつは、護大による滅亡を受け容れることを唱えた「護大派」です。 戦いの勝敗はわかりません。 あるいは勝者などいなかったのかもしれません。 確かなことは、世界を二分した戦乱の末に、世界はことごとく瘴気に呑まれ、世界派は最後に儀を空へ飛ばして瘴気の底より逃れ、護大派は「旧世界」となった各地に都市を建設したこと。 ![]() 護大は激しい戦いに斃れ、その実体は粉々に砕け散って世界中に飛び散って「護大の欠片」となり、その本体は戦いの傷を癒すかのように長き眠りにつきます。 かつて護大派が生み出したアヤカシは護大の欠片を取り込んで創造主の手を離れ、瘴気に呑まれた世界を我が庭として勢力を拡大していき、やがては儀世界にもその姿を現すようになるのです。 旧世界に残った護大派は、瘴気と共に生きるべく社会も文明も、人間の生態までも作り変えていきます。しかしそれでもなお、瘴気に満ちた旧世界においてゆるやかにその数を減らしていき、各地の都市はひとつ、またひとつと崩壊。今では数千人を数える程度しか残っていないとも言います。 護大の墓所に建設された都市に集う彼らは、儀世界の動きに呼応するが如く、遥か数千年の時を経て再び動き始めました。 今度こそ、護大の完全なる復活を願って。 ![]() 儀へと逃れた世界派は儀の浮上に精霊力を使い果たしたのか、繁栄を極めた古代文明はゆるやかに衰退し、歴史は途絶え、儀同士の交流も失われ、儀はそれぞれに一から歴史を歩み始めることとなります。 世界派の一部は「監視者」を自称。いつか訪れる新たなる始まりの日にかつての繁栄を、永遠なる反映として再生することを望み、小さな儀を「箱庭」として閉鎖。古代文明の真髄たる精霊魔法と、生きた標本としてあらゆる生物を保管し、衰退していく世界をただひたすらに監視し続けました。 やがて、監視者の中から離反者が現れます。 彼は箱庭を破壊し、監視者らを滅ぼして天儀へ渡ります。やがて彼は、時を同じくして天儀にも現れたアヤカシを討ち、友を得、王となり子をなし、現天儀朝の始祖となったのです。 それから数千年――人は儀を大地として生まれ、育ち、死に、時代を重ねていきます。しかし儀という揺りかごにもやがて寿命が訪れました。瘴気とアヤカシが拡がりはじめ、儀はその力を失いはじめたのです。 そうして世界は、大きく動き始めました。 |