かつて、天儀は朝廷を頂点とする閉鎖的な氏族社会を築いてきた。 職能と血族による師弟関係をひとつの集団とし、 彼ら氏族は特異な技能をもった専門家集団として王朝に仕えてきた。 彼ら氏族は、長らくの間、技能の真髄を氏族の中でのみ伝授することで閉鎖的な集団を確立し、 内には絶対的な上下関係を築き、外ではその稀少性を維持してきた。 いかに優秀な者であろうと氏族に属さねば先代の技術を受け継ぐことはできず、 精霊を用いる術や特別な工業技術は完全に独占されたものであった。 氏族は技術の独占によって個人ではなく氏族そのもの存在価値を高めようとしたのである。 やがて、朝廷が往年の覇気を失って衰退すると共に、天儀各地の有力氏族たちは強大な力を持ち、 独立傾向を強めることとなり、天儀には多数の王国が成立した。 そうした氏族を中心とする社会体制は長らく安定を保ってきたが、アヤカシと魔の森の規模が拡大するにつれ、 その支配には綻びが生じ始め、緩んだ統制は氏族の統合と離散を促すこととなる。 力を持つ氏族は生き残りを賭けて他の氏族を吸収して技術と人員を我が物とし、 力なき氏族は取り込まれるを待つか、自壊の道を歩んだ。 しかし、大規模化した氏族はますますその動きを鈍らせ、 離散した氏族は傭兵や山賊となって各地に跋扈し、私兵化。 もはや世の流れを留める術はなく、やがて、無軌道な彼らを統制すると共に、 その自由闊達な精神と能力を活かすため、朝廷は宝珠の力と遺跡を開放し、開拓者ギルドが設立されるに至る。 開拓者ギルドの設立と同時に、開拓者の数は年々増加。 決定的な契機となったのは天儀の外に存在した新たな大陸の発見である。 新大陸の発見により、異文化と莫大な富が世界にもたらされ、時代の流れと世相は一変。 後に続けとばかりに開拓者が急増する。 地方の里へ赴けば未だ古い閉鎖的な氏族文化が残る一方で、有為な若者たちは開かれた世界への一歩を踏み出した。 かつての社会は崩れ、氏族が秘匿していた技術は瞬く間に拡大していく。 彼らは、閉鎖的な氏族社会を飛び出して新たなる世界への扉を開き、 新大陸を探り、新技術を磨き、あるいは天儀の神秘に迫らんと、世界狭しと激しく活動し始める。 開拓者とは、いわばそうした古き時代と新しき世界の狭間に生き、その壁を打ち壊す存在なのである。 |